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・シーン0

※以下、亮独白

おかしい!おかしい、おかしいっ!!
なんだあれ!?なんであんなものが存在するんだよ!?
だってさっきまで、普通の…!

亮「うあっ!?」

脚がもつれる。
恐怖なのか疲労なのか、もう随分と長い時間逃げ回った気がする。
暗く冷たい鉄の香りがする廃工場には人の気配はない。俺と…ヤツ以外は…。

絵美「アッハハハハハッ!!小鳥遊くぅーん、どこー?」
亮「ぐぅ…っ!?くっそ、あの笑い声…どーなってんだよ」

心臓が圧縮されるような違和感を覚えながら、今現実として起こってることを足りない頭でまとめる。
アイツの笑い声は絶対に危険だ。至近距離で聴いたらこの心臓の違和感がどうなるかわかったもんじゃねえ。
そんでアイツについたあの『仮面』。アレがついた瞬間変になった。

亮「笑い声だけで人を殺せるかもしれねぇってか…。クソッ、どんなファンタジーだよちくしょう!」

だったらやれることはひとつ。あの『仮面』をはぎ取るか壊す。
ちっとばかし荒っぽいことを仕掛けることになるがしょーがねえ。なんせアイツは俺の命を本当に狙ってきてるんだ。

亮「行くしか…、ねえっ!!うおおおらああああっ!!」
絵美「っ!?うぐ…っ」

全力で突進し押し倒す。禍々しい『笑顔』をしている『仮面』をひっぺがす為、手をひっかける。

絵美「ああっ!?いやあああああっ!?」
亮「クソッ、外れろ!外れやがれえええ!!」
絵美「いやっ、やだっ、だめっ、私はっ!私は『笑顔』でいなきゃダメなのっ!アハッ!アッハハハハ!!」
亮「ぐぅあっ!?」

どーいう馬鹿力だよ…!?
吹き飛ばされた俺の身体は鉄のコンテナに叩きつけられ、そのコンテナすら少しひしゃげている。
つまり、それなりの衝撃を俺は身体に叩き込まれた。

亮「くっそ…、いってぇ…。うご…けねぇ…」
絵美「アハッ!アッハハハハ!ダメだよ小鳥遊くぅーん…、女の子の素顔見るような真似しちゃあ…。私の『笑顔』を壊そうとしちゃあダメだよぉ…!アハハハハ!」

ヤツは『仮面』に引っ張られるように立ち、ひたすら笑い声をあげる。
それが自分の在り方だと、自分がこう在れるのは『笑顔』があるからだと主張するように。

亮「…ざっけんな」

ああ、本当にふざけてる。

亮「その顔のどこが『笑顔』だよ。仮面の下は涙ぼろぼろでぐしゃぐしゃなクセして、今にも自分を壊しそうな苦しい顔して、それのどこが『笑顔』なんだよっ!?」
絵美「…ッ、なに、言ってるの。ほら…っ、私、ちゃんと笑ってるでしょう…?こうしてれば、誰も怒らないの、心配しないの、周りが笑顔でいられる――」
亮「だからふざけんなっつってるだろうがっ!!周りが笑顔だ!?ふざけんな!!そんだけの為になんでお前が『笑顔』であろうとしなきゃならねえんだよ!なんでそんだけの為にお前がぼろぼろでぐしゃぐしゃにならなきゃならねえんだよ!!」
絵美「違うのっ!私は『笑顔』なのっ!!…だから、私は…っ」

許せねえ。何が?コイツをそこまで追い詰めた全てを、クソッたれな現実を。何より今まで気づかなかった俺自身を。だから――

 

亮「『助けて』って言えよっ!!お前が、お前自身がもう『笑顔』でいられないから、だから頼れよ!友達だろうがっ!!」

※以上、亮独白
 

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